イーサリアムの基本とは?仕組み・特徴・投資リスクをわかりやすく解説
この記事を読み終わると得られること
- イーサリアムとは?何のために作られたの?
- ブロックチェーンの仕組み
- ビットコインとはどう違う?
- イーサリアムはどこで買えてどう保管するのか
▼ Ethereum(イーサリアム)とは?

イーサリアムは誰が、いつ作ったのか?
イーサリアムを生み出したのは、ロシア生まれカナダ育ちのプログラマー ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin) です。彼は10代の頃からビットコインに強い関心を持ち、2011年には「Bitcoin Magazine」を創刊しました。しかし、ビットコインの仕組みには「送金」以外の用途で使うには制約が多いと感じ、もっと幅広く使える仕組みを作ろうと考えたのがイーサリアムの出発点です。
ブテリンの構想に賛同した仲間も集まりました。たとえば、ギャビン・ウッド(Ethereum仮想マシンの設計者)、ジョセフ・ルービン(後にConsenSysを設立)、チャールズ・ホスキンソン(現在のCardano創設者)などです。彼らは後にそれぞれ独自のプロジェクトを立ち上げていますが、当時はイーサリアムの立ち上げをともに支えた重要な人物でした。
- 2013年:ブテリンがホワイトペーパーを公開し、イーサリアムの構想を発表。
- 2014年:スイスで「Ethereum Foundation(イーサリアム財団)」を設立。同年にはICO(仮想通貨による資金調達)を行い、大きな注目を集めました。
- 2015年7月30日:イーサリアムのメインネット「Frontier」が公開され、正式に稼働を開始。
つまり、イーサリアムは 2013年に提案され、2015年に実際のブロックチェーンとして世に出た ということになります。
▼ イーサリアムはどんな問題を解決するために作られたのか
1. 分散型プラットフォームの必要性
ヴィタリック・ブテリン(イーサリアムの発案者)のホワイトペーパー “Ethereum: A Next-Generation Smart Contract and Decentralized Application Platform”(2013年)では、次のように述べられています。
“Bitcoin and its underlying blockchain provide a decentralized currency, but they are limited in terms of scripting capabilities.”
(意訳:ビットコインとその基盤であるブロックチェーンは分散型通貨としては機能するが、スクリプト機能に制約がある)
ここで指摘されている問題は以下です。
2. 信頼不要の契約(スマートコントラクト)の必要性
ブテリンは、従来のインターネット上のサービスは「中央管理者に依存する」ことが多いことを問題視しました。
“A decentralized blockchain with a Turing-complete programming language allows the creation of contracts which are executed exactly as programmed, without any possibility of downtime, censorship, fraud or third-party interference.”
(意訳:チューリング完全なプログラミング言語を備えた分散型ブロックチェーンは、ダウンタイム、検閲、詐欺、第三者の干渉なしに契約を正確に実行できる)
つまり、イーサリアムは以下の問題を解決することを目指しました。
3. 具体的なホワイトペーパー内の課題設定
ホワイトペーパーでは、次のような課題が明示されています。
- 通貨以外の用途の不足
ビットコインはデジタル通貨としては優れているが、単一用途に特化している。 - スマートコントラクトの柔軟性の欠如
任意条件での自動実行や複雑な取引ルールの記述が困難。 - 分散型アプリケーションの制限
DAppsを作るためには柔軟でチューリング完全な環境が必要。
この3点を解決するため、「イーサリアムは分散型の汎用コンピューティングプラットフォームである」 ことをホワイトペーパーで打ち出しました。
4. 解決策としての特徴
- チューリング完全なEVM(Ethereum Virtual Machine)
- 任意の計算をブロックチェーン上で実行可能
- これにより契約やDAppsの自動化が可能になる
- スマートコントラクトの直接実行
- 契約条件がコード化され、事前にプログラムされたとおりに自動実行
- 改ざんや停止がほぼ不可能
- トークン化・アセット表現
- ERC規格により通貨以外の資産(NFT、ステーブルコインなど)もブロックチェーン上で管理可能
- 分散型アプリケーションの拡張性
- サードパーティ開発者が自由にDAppsを構築可能
- DeFiやDAOなど新たなエコシステムの形成が可能
5. まとめ
イーサリアムは、ビットコインの課題である「通貨以外の高度な計算・契約の実行の制限」を解決するために作られました。
- 解決したい課題:
- 中央管理者依存の排除
- 自動化契約(スマートコントラクト)の柔軟性
- 分散型アプリケーションの実行環境不足
- 解決手段:
- チューリング完全なEVM上でのスマートコントラクト実行
- トークン化やDAppsによる資産・契約管理
- 分散化による透明性・耐改ざん性の担保
言い換えれば、イーサリアムは「分散型インターネットの基盤」を提供するために設計されたブロックチェーンプラットフォームです。
▼ イーサリアムとビットコインは何が違う?
1. 誕生の目的と思想
- ビットコイン
サトシ・ナカモトが2008年に発表したホワイトペーパーで提案された「信頼を前提としない電子通貨システム」です。最大の目的は、中央銀行や政府のような仲介機関に依存しない 分散型のデジタルマネー を実現することでした。設計思想は「デジタルゴールド」としての希少性・安全性を重視しており、決済や価値保存の機能に特化しています。 - イーサリアム
ヴィタリック・ブテリンが2013年に提唱した「分散型アプリケーション(DApps)を構築するためのプラットフォーム」です。単なる通貨ではなく、ブロックチェーン上で スマートコントラクト(契約の自動実行プログラム) を動かすことを可能にしました。目的は「ブロックチェーンを汎用的な計算プラットフォームにする」ことであり、金融に限らずNFT・DAO・DeFiなど多岐にわたる応用が可能です。
2. 発行上限と供給モデル
- ビットコイン
発行上限は2100万BTCと固定されています。半減期ごとに新規発行が減少し、最終的にはマイナーへの報酬が取引手数料に移行していく仕組みです。希少性が価値の源泉となり、「デジタルゴールド」としてのポジションを確立しました。 - イーサリアム
供給上限は固定されていません。元々はマイニング(PoW)で発行されていましたが、2022年の The Merge でProof-of-Stake(PoS)に完全移行。現在は「ステーキング」によって新規ETHが発行されます。さらに EIP-1559 による「バーン(取引手数料の一部焼却)」が導入されたため、ネットワーク利用が活発なときには供給が減少する=デフレ的性質を持つのが特徴です。
3. コンセンサスアルゴリズム
- ビットコイン:Proof-of-Work(PoW)
大量の計算資源を投入して「ハッシュ計算」を競争し、ブロックを生成する仕組み。セキュリティは非常に強固ですが、電力消費が膨大で「環境負荷」が問題視されています。 - イーサリアム:Proof-of-Stake(PoS)
保有するETHをステークすることでブロック提案権が得られる仕組み。PoWよりもエネルギー効率が圧倒的に高く、環境負荷が小さい。分散性・安全性・スケーラビリティのバランスを改善する方向で進化しています。
4. 技術的機能と拡張性
- ビットコイン
スクリプト言語は限定的で、複雑なアプリケーションを直接動かすことは想定されていません。セキュリティとシンプルさを優先しており、通貨機能に特化しています。近年は Lightning Network などの二層技術でスケーラビリティ改善が進められています。 - イーサリアム
チューリング完全なプログラミング言語(Solidityなど) を採用し、DAppsやDeFi、NFTマーケットなど無数のユースケースを可能にしています。さらに、Layer2(Arbitrum、Optimism、zkSyncなど)を活用することで処理性能を拡張し、手数料低減やスケーラビリティの問題に対応中です。
5. チェーン構造と進化スピード
- ビットコイン
開発方針は非常に保守的で、アップデートは限定的かつ慎重に行われます。これは「通貨の安定性」を守るためであり、価値保存資産としての信頼を損なわない姿勢です。 - イーサリアム
ハードフォークやアップデートを積極的に行い、進化のスピードが速いのが特徴。The Merge(PoS移行)、Shanghai(ステーキング解除)、DankshardingやRollup中心のスケーリング戦略など、常に技術革新の中心にあります。
6. 価値を付けている性質
- ビットコイン:希少性(2100万枚の上限)、セキュリティ(膨大なハッシュパワー)、最初の暗号資産としての先行者優位性。
- イーサリアム:汎用性(スマートコントラクト)、ネットワーク効果(数万以上のDApps、DeFiやNFTの基盤)、技術革新のスピード。
▼ イーサリアムまとめ
イーサリアムは、ヴィタリック・ブテリンによって2013年に提案され、2015年に正式に稼働したブロックチェーン・プラットフォームです。ビットコインが「価値の移転(送金)」を主目的として設計されたのに対し、イーサリアムは「分散型アプリケーションの基盤」として機能する点が大きな違いです。
ホワイトペーパーでは「一般的なスクリプト言語を備えたブロックチェーンを用いれば、あらゆる金融契約や分散型アプリケーションを実現できる」と記されており、これがスマートコントラクトという仕組みに結びついています。スマートコントラクトとは、契約条件をコードで自動実行するプログラムのことで、中央管理者を介さずに信用を担保できるのが特徴です。
こうしてイーサリアムは、単なる暗号資産を超えて、DeFi(分散型金融)、NFT(非代替性トークン)、DAO(分散型自律組織)などの多彩なエコシステムを育む基盤へと発展しました。
▼ 2015年からのイーサリアムアップデートの歴史
年 | アップデート名 | 発効ブロック/エポック | 主な EIP・特徴 |
---|---|---|---|
2015 | Frontier | Block 0 | Ethereum ネットワーク開始。基礎機能のみ。 |
2015 | Frontier Thawing | Block 200,000 | ガスリミット調整など初期安定化。 |
2016 | Homestead | Block 1,150,000 | 安定性向上、将来のアップグレード準備。 |
2016 | DAO Fork | Block 1,920,000 | DAO ハック対応、資金回収。Ethereum Classic 分岐の契機。 |
2016 | Tangerine Whistle | Block 2,463,000 | DoS 攻撃対策、opcode コスト調整。 |
2016 | Spurious Dragon | Block 2,675,000 | 状態デブロート、リプレイ攻撃対策、DoS 対応。 |
2017 | Byzantium | Block 4,370,000 | 複数の暗号プリコンパイル追加、マイニング報酬 5→3 ETH に減少。 |
2019 | Constantinople / Petersburg | Block 7,280,000 | EIP-1234(報酬 3→2 ETH 減)、難易度爆弾延期。Petersburg で Constantinople のバグ修正。 |
2019 | Istanbul | Block 9,069,000 | SNARK/STARK サポート強化、opcode コスト見直し、DoS 耐性改善。 |
2020 | Muir Glacier | Block 9,200,000 | 難易度爆弾の延期。 |
2020 | Beacon Chain genesis | Epoch 0 | Proof of Stake (PoS) コンセンサスチェーン始動。 |
2021 | Berlin | Block 12,244,000 | トランザクションタイプ追加、ガスコスト最適化。 |
2021 | London | Block 12,965,000 | EIP-1559(base fee + tip)、報酬調整。 |
2021 | Altair | Epoch 74,240 | Beacon Chain 初のアップグレード。sync committee 導入。 |
2021 | Arrow Glacier | Block 13,773,000 | 難易度爆弾の延期。 |
2022 | Gray Glacier | Block 15,050,000 | 難易度爆弾の延期。 |
2022 | Bellatrix | Epoch 144,896 | Merge のためのコンセンサス層アップグレード。 |
2022 | Paris (The Merge 実行層) | Block 15,537,394 | Ethereum が PoW → PoS に移行。 |
2023 | Shanghai (実行層) / Capella (コンセンサス層) ― Shapella | Block 17,034,870 / Epoch 194,048 | EIP-4895(ステーキング ETH の引き出し解禁)など。 |
2024 | Cancun (実行層) / Deneb (コンセンサス層) ― Dencun | Block 19,426,587 / Epoch 269,568 | EIP-4844 Proto-Danksharding 導入。Rollup データコスト削減。 |
2025 | Prague (実行層) / Electra (コンセンサス層) ― Pectra | Block 22,431,084 / Epoch 364,032(2025/5/7予定) | EIP-7002, EIP-7251, EIP-7702 など。ステーキング改善、validator 上限拡大、EOA アカウントのスマートコントラクト的機能など。 |
最後までお読みいただきありがとうございました。